阿波国便り・春愁篇

徳島の原水さんからメールが来ました。【無職の人間には煩わしいだけの連休がやっと終わりました。そしたらまたコロナ感染者数が増加に転じました。いたちごっこです。

30年以内に南海トラフが起こると言われてから、もう20年ほど経つのではないでしょうか。しかしいまだに30年以内と言っており、縮まりません。軍事大国が日本侵略を開始するのと大地震の発生と、どちらが先かと思う、この頃です。(原水民樹)】

野薔薇

野薔薇にはまた八重咲きとは別の風情があります。原水さんのキャプションは「岡にのぼれば花いばら」となっていました。初句は「愁ひつつ」、蕪村の句です。春は明るく、ものみな生き生きと伸びやかになると同時に、人はふと、いわれのない愁いにつつまれる季節でもあります。春愁はいかにも近代人の心理のようですが、すでに大友家持の歌にも詠まれ、蕪村は「北寿老仙をいたむ」でもそういう感情を歌っています。私は初めてこの句を知った時、近代詩ではないかと眼を疑ったほどでしたが、後に大学院で、三好行雄先生の近代詩史を論じる特講が蕪村から始まったことで、納得しました。

ウマノアシガタ

原水さんのメールには写真が小さすぎた、とありましたが、実物は花弁に光沢があるので目立つ花です。葉が馬蹄痕に似ていることからきた名らしい。実はちょっと苺に似ていますが、毒草です。キンポウゲ科なのですが、ウェブで調べると、これの八重咲きをキンポウゲという、とあるのは疑問です。別品種ではないかしら。

英語ではキンポウゲのことをbutter cup というそうで、つやのある、丸い器のような花にぴったりです。高校時代に英語の授業で、ゴールズワージーの「小春日和」を読まされ、一面にbutter cupが揺れる草原で老年の主人公がまどろみに入っていく場面(それが幕切れでした)があったのを、今でも思い出します。