本屋の棚

先日、新聞で荒井祐樹さんのコラム「生きていく言葉」を読みました。「置き場に困る「いい本」を」という見出しで、ある精神科病院のアトリエについて取材した本を出したところ、知人の出版関係者から「本屋が置き場に困るでしょうね」と言われた話を書いています。書店が売り場の棚に出す時に、医療・福祉か芸術・アートか分類に迷うだろうという意味で、業界人からすれば販売戦略が立てにくい、という忠告として荒井さんは受け取り、しかし書店員の中には、ジャンル分けに迷う本にはいい本が多いと言ってくれる人もいたそうです。

荒井さんは、「世界は書店の棚より複雑にできている。ややこしく入り組んだ世界の魅力を書くのが自分の仕事」と言っていて、「本屋が置き場に困る本」を執筆方針にしているそうです。共感しました。本屋で本を探していると時々、この本がこんな所に置いてある!と思うことがあります(そっと移しておくこともある)。

荒井さんは、勤務先の大学では近現代文学のポストにいるようですが(肩書は障害者文化論研究)、障害者と芸術との関係について現場を取材した結果を書いているそうで、今度本屋で探してみたいと思います。学際的研究への移行が声高に叫ばれた時期があり、たしかに学問の領域は広がり、既成の分類では当てはめにくい分野が増えました。でも荒井さんの場合は学際性というより、実践と研究の交差した分野というべきでしょうか。

大通りにシェア型書店なるものがオープンしました。30cm四方・奥行というボックスを、2年間¥11000の会費、1区画1ヶ月¥3300、それに売れた価格の5%を払うという契約で、店番は不要だという。今のところ手持ちの古本を出している人が多いようでした。新商売です。書店の棚もコミュニケーションの一手段、と謳っていますが。