気がつけば

気がつけば、今年もあと8日。年々、年越しは簡単にしよう、と決心してぎりぎりまで手を抜き、結局、最後の数日を必死で頑張るはめになるのですが。年賀状の枚数は、ピーク時の半分になりました。還暦を機に賀状をやめるという人が複数いて、勇気があるなあと感心しています。かつて西尾光一さんがそう宣言なさり、私は、でも目下から差し上げる分には構わないだろうと考えて出し続けていたら、学会の席で、意地になって寄越す人がいる、と言われて赤面したことがありました。

確かに歳末、数百枚の宛名書き作業は苦しくはありますが、元日に色とりどり、文面とりどりの賀状をめくる楽しみは他に代え難く、そのためについ奮闘してしまうのです。若い頃はゴム版で3色刷を作っていましたが、300枚を超えた時期から出来なくなり、地方勤務の間はその土地の絵入り葉書を使って印刷し、50代後半が枚数のピークでした。年賀状を30枚以上貰っていれば、それを担保に貸し付けるサラ金があると聞き、なるほど年賀状は社会的信用度の証明なのか、と納得したこともあります。

若い頃、着る物はしゃきっとした布地が好きでした。今はフランネルのような、軽くて柔らかいものを着たくなりました。食事以外に飲食する習慣はなかったのに、赤血球が多すぎるので冬場も水分をこまめに摂るよう医者から言われ、喫茶をするようになりました。すると1口2口つまむ物が欲しくなり、卓上にはチョコレートかドライフルーツを入れた蓋物を置くようになりました。食事のメニューも、小鉢類が増え、漬物や佃煮の常備菜を探しておくようになったのです。ふと気がつけば、これらはみな、祖母や父や、職場の先輩たちの習慣とそっくりでした。

歳暮述懐ー年を重ねたことへの愚痴を詠むのが、歌人たちの年末の慣わしでした。