菩提樹

暗く降り籠められる天気が続いた昨日、郵便受けにやや膨らんだ封筒が届いていました。辻英子さんからです。手紙と、パックに詰めた植物の小枝や花が入っていました。

菩提樹の花が咲きました。朝、窓を開けると甘い香りが漂ってきて、蜂の羽音もかしましく、蝶も飛び交っておりました。1969年に、説話研究の松浦貞俊先生の烏山のお宅に聳えていた菩提樹の幼木を分けていただき、伊香保の山荘に移植しました。毎年6,7月になると、下向きの小さな淡黄色の花をつけ、かぐわしい香りを放ってくれます。

ドイツ語の「菩提樹 Lindenbaum」は西洋菩提樹、欧米の街路樹として広く用いられ、シューベルトの「冬の旅」でも親しまれていますが、釈迦が樹下で悟りを開いた印度菩提樹とは別種。花茎を乾燥させて熱湯を注ぐリンデンフラワーティーは伝統的な飲み物で、穏やかな時間をもたらしてくれます。我が家ではこのままドライフラワーとしてあちこちに飾って眺めたり、ティーとして毎日いただいております。(辻英子)】

なるほど印度では、葉脈だけを残したスペード形の葉に極彩色で絵を描き、黒い台紙に貼って売っていましたが、あれはクワ科。実で念珠を作る中国原産の菩提樹や、西洋菩提樹シナノキの仲間。ほのかな香りは喩えれば使い慣らした家具の匂い、とでもいった安心感があります。就寝前にも飲めるし、紅茶とブレンドしたり蜂蜜を入れてもいいらしい。

少し取り分けて、ティーポットに入れ、熱湯を注いでみました。未だ分量の加減が分かりませんが、穏やかで、身体が温まる飲み物です。小さな角瓶に詰めた花と縦型の瓶に挿した小枝を竹笊に並べて卓上に置くと、灰緑色の葉と茶色に枯れた小花とが、落ち着いたインテリアになりました。今朝目覚めた時、室内にごくかすかに漂う香りがあって、昨夜ポットから捨てた花殻が香っているのだと気づきました。