水を流せない日

揚水ポンプを交換するので、終日水は流せない、というお触れが回りました。困るのはトイレです。なまじタンクレスの自動なので、使ったら即、水が流れる仕組みになっている。便器メーカーに問い合わせても、電源を切って手動に切り替える方法が複雑で、故障の原因になりかねない、との返事。飲料水や洗浄水は確保できても、都会の非常時で一番問題になるのはトイレだ、と認識しました。

仕方がないので、近くの区立図書館で過ごすことにしました。締め切りの迫った仕事を1日棚上げするのはつらいが、やむを得ません。偶々必要があったので、『新古今和歌集』の哀傷・羈旅・雑の部を通読しました(新潮の古典集成でしたが、購入以来誰も読んでいないらしく、栞紐も丸まったままでした)。静かで冷房の効いた館内では、眠気が襲ってきます。時々立ち上がって、雑誌の棚を眺めたり、OPACで軍記物語関係の図書を検索してみたりしました。

収穫その1―物語の中に取り込まれる和歌には、ある共通性があるような気がしてきたので、今後注目しておこうと思いました。当たり前のようですが、あまり尖った歌、個性的な歌や個別性・具体性の強い歌は採られない。その点、隠者の歌は、物語の中での適応性が高いように思われます。

収穫その2―日頃見ない雑誌をぱらぱらめくりました。「日経トレンディ」9月号が「SNSの正しいふざけ方」という特集を組んでいて、ツイッターを使った新商品の宣伝や企業広報の流行を、追跡しています。個人対個人で話しかけてくるかのような錯覚を狙うのが、コツだとか。かの大国の大統領のやり方は、商業的戦略なのだと知りました。

帰宅したら、お触れに書いてあったより3時間も早く、工事は終わっていました。