虹の彼方

極彩色ファッションで幼児言葉で喋り、やはり極彩色の妻と共に活躍していたタレントが亡くなりました。沖縄出身で、彼の家族の系譜はまさに日本の一時代を体現していましたし、息子の誕生後離婚、しかし家族として暮らすという、未来を先取りしたような生き方で、幼児言葉に違和感を覚えていた私も、今後の成功例になるはずと思っていました。

自身「父親であることには誇りを覚えるが、夫であり続けることが苦しい」という意味のことを語っていたそうで、性自認の問題が生やさしくないことが改めて明らかになりました。偉かったのは、そして辛いのは元「妻」だろうなあ、と痛ましい気がします。

性自認同性結婚への理解を法制度上で保障しようとして、社会的な葛藤が起きていますが、もっと手前ー男らしさ女らしさの枠をみんなが緩めることや、相続や戸籍の規定をもっと柔軟にすることで、問題はかなりの部分が解決し、少なくとも解決に向けて単純化できるのではないかと考えます。

ふと思うのは、彼に、何もかも打ち明けて聴いて貰える人(男でも女でもいいが恋愛関係ではない)が身近にいたらよかったのでは、ということです。男(または女)らしくしろ、お前はその規格内に入ってこない、と言って虐められる、もしくは壁にぶつかることは、生まれつきの性自認者であっても屡々起きることなのです。そのために愛が絞め殺されることもまた。女性の場合、ちょっと成績が良かったり、意見をはっきり言ったりするだけで、生涯、そういう目に遭います(ほんの少しずつ、事態は改善しているでしょうが)。そんな時、身近な、包容するまなざしに支えられます。誰にでもあることです。

息子の誕生祝いに共に見た虹の写真をネット上に投稿した「元妻」は、「なりたい自分になって、見守っていて」と書き添えています。君は、ちゃんと理解されていたんだよ。