越前だより・伊勢訪書篇

大谷貞德さんから、連休を利用して伊勢の国学者の蔵書を訪ねたとメールが来ました。

有造館入徳門

【津藩の藩校有造館の講堂にあったという正門をくぐってきました。この門は有造館が廃校になって以後も師範学校、小学校などの門としても使われていたようです。多くの学生がこの門をくぐり学問に励んだことを思いました。一通り調査を終え、その足で齋藤拙堂のお墓参りにも行きました。】

津市図書館には稲垣定穀や齋藤拙堂の蔵書があり、長門本平家物語があります。但し、国文学研究資料館のDBが有造館文庫にもあるとしているのは、誤りです。確かに内題に「平家物語長門本」とある写本を蔵していますが、これは流布本の抄出本です。

鈴屋入り口

【宿泊地の松阪はこの日は祇園祭で、御輿が出て太鼓が鳴り響き、賑やかな夜でした。

翌日は宣長に関係する史跡などを中心に巡りました。松阪の一夜の舞台となった新上屋の跡地を訪れると、碑がたっているだけで当時の面影は何もないのですが、真淵が宣長に言った「低いところをしっかりと固めてから高いところへ進め」との言葉を改めて噛みしめました。宣長記念館には宣長自筆本も多く展示されており、時が経つのを忘れて見ました。記念館の隣には、移築された鈴屋があり、1階は上がることができました。】

私も院生の頃、訪書のついでに鈴屋(すずのや)に寄ったことがあります。『古事記伝』の版木などがあって、独特の雰囲気でした。大きな土鈴を土産に買って帰りました。「松阪の一夜」という有名な逸話は、私は学校教材で習ったのでなく、高校だったか学部だったか、教師の語った挿話の1つとして覚えています。その時私の印象に残ったのは、生涯の師といえども対面したのは一晩だけだったのだ、ということでした。

旧小津清左衛門家

【松阪には豪商たちの邸宅もあり、一つ一つ訪れてから伊勢の地をあとにしました。】

そういう豪商が、学者の蔵書形成に関わっていたらしいことも注意すべきことです。小津和紙店は呉服橋にも出店していて有名です。

半世紀以上前、院生だった私は松阪牛を味わいたいと思って、昼食にビーフカレーを食べてみましたが、肉片は見つかりませんでした。