日曜の構内

午過ぎ、朝刊を持って東大構内へ出かけました。樟の葉が新旧入れ替わる時季で、足元は大量の落葉。正門脇の桜は満開でしたが、周囲の根から蘖が群生し、まるで灌木の桜の藪のようです。老木になり、しかし染井吉野は実生で次世代を作ることができないため、こうして若返りを図っているのだろうと、ちょっと切なくなりました。工学部棟横の並木は高々と、青空に映える見事な花の廻廊でした。

広場へ回ると、一重の枝垂桜が1株、いま盛りです。背景には色の異なる新芽の出た木が3本。子供を遊ばせている一家や、シートを広げて寝転んでいるカップルもいます。驚いたのは、個人用テントが2張も建っていたこと。家族連れが入っていて、ここで1日過ごすのでしょうか。甘い新芽や何かの花の匂いが風に乗ってきます。私も銀杏の下に腰を下ろそうとしたら、ボール遊びをしている兄弟2人が備付の椅子に荷物を広げて占拠しているので、1つ空けてくれ、と言いました。子供はちょっと躊躇いながらも空けてくれたのですが、驚いたことに枝垂桜の根元に座り込んでいた若い両親が、もう1つの椅子をそっちへ持ってこさせたことでした。座るわけでもなく、ボールをぶつけて遊んでいます。

心が冷えました。みんなが見る桜の下、それが見える椅子、確保しておかなければ気が済まないのでしょうか。昨日歩いた街は、こちらが老婆2人連れだったせいか、見知らぬ人ともEVやバスの乗降を譲ったり、短い言葉を交わしたり、ベビーカーから2歳くらいの女の子に微笑みかけられたり・・・ああ花の街は誰もが心温かくなる、と思ったのに。

新聞を読み終わり、小さなおにぎりを1つ食べて、赤門前の八重桜、学士会館跡の枝垂桜(こちらは八重が4本)を見て帰りました。八重桜は未だ四分咲き、心なし元気がないようなので、幹を軽く叩いて、がんばれよ、と呟きました。