彩雲

昨日の午後、ふと窓外を見上げたら、曇天の一部が微かに色づいていました。赤、黄、青3色の帯が描く円の断片です。中世なら、誰かが往生した徴と記録されるかも、と思いながら眺めました。雲の中の水滴に陽光が当たって、虹の断片ができたのでしょう。

夜のニュースで、小澤征爾が亡くなっていたことを知りました。享年88、6日に亡くなったのだそうです。晩年は病を押して、第九の一部だけを指揮したり、車椅子で舞台に上がったりして痛々しい気がしましたが、本人の希望だったのでしょうね。米国での活躍が多かったが、日本では若手育成や地方の文化興隆に奔走する姿が多く報道されました。1960年代、華々しい帰国デビューでしたが、それは必ずしも祝福されてはいませんでした。NHK交響楽団を指揮するはずだったのが、団員たちから反発を受け、報道を賑わせました。練習に毎回遅れてくるという批難もありました。当時の日本の音楽界ではN響が第一のオーケストラと言ってもいいくらいだったので、N響を振れなければ私たちは(少なくとも放送を通じては)彼の指揮を聴くことができません。1秒の何分の1を統括する指揮者がどうして遅刻なんかするのか、と日記に書いたことを覚えています。当時の彼の演奏では、武満徹など日本の現代作家の曲が印象に残っています。

その後は私がコンサートを聴く余裕がなく、縁がありませんでした。後半生は人づきあいのいい、広汎な人々を視野に入れて活動する国際人として有名になったようです。

我が家の購読紙の日曜欄には「突破する力」という連載があって、フロンティアたちを取り上げ、自己の性格を評価したグラフを載せています。ほぼ全員が「協調性」には低評価をつけ、円が大きく凹みます。そういうもんなんだろうなあ。

彩雲は、オザワが乗って行ったのでしょうか。