研究報告会2日目

午後1時から、第3回研究報告会2日目が始まりました。

1本目の報告は鈴木愼也さんの「古代スリランカの灌漑施設に関する考古学的研究ーGISとSfMを用いた研究事例の紹介ー」。スリランカ北部には紀元前5世紀頃から12世紀まで使用されていた石造の貯水灌漑施設の遺跡が無数にあり、その構造や建設技術を最新の撮影技術を駆使して調査しているが、手つかずの問題が多いそうで、まさにダイナミックな、快進撃でした。スリランカ熱帯雨林ばかり、とのイメージを持っていましたが、古代からの歴史を予習しておけばよかった、と悔やみながら聴きました。

手嶋大侑さんの「除目史料の可能性ー花山院と藤原実資ー」は、実資は花山院が亡くなるまで9年間、院の別当だったと推測したもの。この時代に詳しい松薗斉さんが傍聴に来ていて、フロアからの質問者も交え、日本史の専門的議論が展開しました。

3本目は木村悠之介さんの「久米邦武筆禍事件と神道宗教論ー宗教学説の受容を中心にー」。1891年、歴史学者の久米邦武が「神道は祭天の古俗」という論文を発表し、神道国学からの非難を浴びた事件を廻り、神道史の中で「神道非宗教」論を正しく位置づけようとする発表。近代日本が大きく道を誤ることになる前段階に、先祖祠祭や国家の始原をどう考えるか曖昧なまま民族主義を鼓吹した時期があったことを思えば、丁寧な検証と議論が必要なテーマです。

最後に中尾文香さんの「障がい者雇用をきっかけとしてディーセントワークを考える」と題する記念講演が行われました。中尾さんは、障がい者も満足な生涯を送れる働き方が保障されるべきだとの考え方に基づき、NPO法人ディーセントワ-ク・ラボで仕事をしています。活動が次第に広がって、障がい者だけの問題に留まらず、すべての人に居場所がある社会を目指す、との意気が伝わってきました。

この基金も発足後19年、奨学生同士が次第に、時には思いがけず、網目のようにつながってきて、嬉しい2日間でした。