池畔好日展

銀座へ出かけました。今日も猛暑日、日が傾き始めるのを待って出かけることにしたのですが、さすがに金太郎スタイルというわけにはいきません。驚いたのは地下鉄も銀座の街も、マスクなしの若者で一杯だったこと。拍子抜けしました。

目的は鳩居堂の4階で開かれている「住川英明展 池畔好日」です。住川さんは鳥取大学に勤務した時、同僚の若手教官でした。教育学部国語科の書道担当で、新潟出身、筑波大学の院を出て、水戸藩の書を研究していました。こぢんまりとした静かな会場に、38年前より更にぽっちゃり体型になった彼が、夫人と2人で立っていました。

住川英明展にて

仮名交じりの書が専門のようですが、今回は自分が作った短歌を書いてみた、とのことです。例えば「黒揚羽いま六月の地に落ちて翅の橙風に滲めり」。大学のある湖山池のほとりでの嘱目吟を散らし書きにした、20数点が展示されています。

山茶花

山茶花鳥取市の木。無彩色の冬の街のそこここを白や紅で彩ります。暫く思い出話や知人の近況をお喋りしました。住川さんはあの頃、国語科の教官内で最年少でしたが、抜群の安定感がありました。異動したがる人が多い中、助手から始まってこの春の定年まで、附属学校長も勤め上げたそうで、あの当時私は(助教授でしたが)、この人は若いけど腰を据える気がある、大事にしなければいけない、とひそかに思ったものでした。

ここに展示した作品は2ヶ月ほどで一気に書き上げたそうで、書く時は、その歌を知らず知らず口ずさみながら書くそうです。白い料紙と落ち着いた色の表装で統一され、階下から漂ってくる微かな香の香りと共に、穏やかで飾らない音調の歌の中で過ごす時間は、短くとも心身をリフレッシュさせてくれます。

鳩居堂銀座店4階画廊 9月3日まで 11:00~19:00(3日は17:00)