図書館と書店・版元

新聞紙上で、政党の議員連盟が図書館の購入本についてのルール作りを企図している、というニュースを見て、えっ、と思いました。公共図書館がベストセラーを複本で購入するから本が売れない、書店や版元を圧迫している、という論理らしい。ちょっと前にも、似たような発言をした大手出版社社長がいました。

新聞記事は後の方で、図書館の複本購入が本の売り上げに与える影響は、あってもさほど大きくないという調査結果を示し、書店や版元が図書館の機能や影響について正しい認識を持つことの必要を示唆していますが、重大なことは、図書館の独立性に政府や議員団体が口を出す危険性です。文科省は今秋にも、書店、出版関係者、図書館関係者による図書館の購入本についてのルール作り検討の場を設ける、と言っているそうですが、これは意外に深刻な問題ではないでしょうか。

図書館には「国民の知る自由を保障する」義務がある、というのが図書館協会の立場です。本を作り、流通させる人々がいなければ本は読めない、という単純な問題ではありません。出版されて多く流通している本を、対価を払って買える人だけが読めればいいというものではなく、出版後直ちに買われる本だけが読まれればいいわけではない。そのためにこそ図書館がある。図書館を貸本屋と勘違いしているのは、一体誰か。

調べてみると、2016年に書店経営者懇談会の要望に応えて「全国の書店経営者を支える議員連盟」なるものが出来、後に「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」と改称したらしい(代表は、与党第一党中の最大派閥を仕切っている人です)。何でもかんでも政府や国の関与を求める風潮は、恥ずかしいものです。知を扱う業界は、そのことを深く自覚して欲しい。