少年文学論

川田正美さんから『少年文学再考ー講談社文化を中心に』(想田正の筆名で執筆 展望社)が送られてきたので読んでみました。

川田正美さんとは40年くらい前に、大塚駅前の日文協事務所でお目に掛かりました。私は日文協の会員ではないのですが、ある時、大学院の先輩から、日文協の中世部会で太平記を読むことになったが、軍記専門の人がいないから来い、と言われて2年半お付き合いしたことがあります。月1回、古典大系太平記を全巻読み通しました。杉本圭三郎さんや大隅和雄さん、松田存さん、中村格さん、小林保治さんもいて、贅沢な会でした。

会の後は、揃って大塚駅前の「ととや」で呑みました。会の世話役をしていたのが川田さんだったのです。太平記も第3部くらいになると、私はあまり役に立っていなかったと思いますが、先輩たちの話を聞くのが楽しい会でした。

その後川田さんとは学会の会場でお見かけするだけでしたが、編集者になり、昭和の歌謡曲小田切秀雄についての本も出しておられたようです。

本書は1少年文学再考ーその可能性を探る 2傑作を生んだ作家たちー『少年クラブ』の栄光 3再現された世界の名作ー《世界名作全集》の魅力 という構成で、1は大正・昭和前期の少年文学概論、2は雑誌「少年クラブ」の代表作家サトウハチロー横溝正史久米元一南洋一郎を取り上げ、3では『ロビンソン漂流記』『宝島』『巌窟王』『ああ無情』の再話である講談社の世界名作全集を中心に回顧しています。

御家族のことは知らないのですが、川田さんは今でも少年文学にどっぷり浸かり、手に汗握ってわくわくする、いいお父さんなのだというのが一読後の感想です。息子さんがいれば、父親というよりお友達かな。名作の再話の功罪について、考えさせられました。