信濃便り・足早の春篇

長野の友人から、今年は春が足早で、桃も桜も、あっという間に咲いて過ぎ、例年なら花の中を走る長野マラソンも、並木の水木の花だけが見ものだった、と写メールが来ました(長野の水木は花の色が濃く、花びらが伸び伸びと広がっていて、東京の街路樹の水木とは別種のように見えるほどです)。

木香薔薇

よく生垣にされる灌木ですが、いちど水戸で、10mほどの大木に絡まって梢の方まで咲いているのを見たことがあります。日光ホテルでは、この花が壁面を埋め尽くすように咲きます。いつぞや短く剪った1房を、父が本棚の隅に置いていたおどけ顔の小さな壺に投げ入れたらとてもぴったりだったので、庭木に欲しくなりましたが、さすがに蔓性植物を我が家のベランダで育てるのは無理。小枝を挿しておけばすぐ根付く、と教えられましたが、諦めるしかない。近所に白い野薔薇とこの木香薔薇とを混み垣にしている家があって、季節が来る度に、1枝貰えないかなあと思いながら通り過ぎます。

落花の中で咲く牡丹。百花の王です。東京では一昨日、もう散った株を見かけました。ほどよい開き具合ですね。牡丹やダリア、薔薇など大輪の花は、花弁の締まり具合、ほどけ具合が印象を左右するので、朝のうちに観賞するのがいいらしい。鳥取在勤時代、全国に牡丹の苗を供給している大根島へ、GWに観に行ったことを思い出します。惜しむらくは牡丹は香りがあまりよくないこと。色とりどり、一面の牡丹畑でしたが、目で楽しむものだと知りました。

信濃路は花冷えと初夏のような気温とを繰り返し、まるでジェットコースターのよう、と友人のメールにはありました。我が家では、亡くなった従妹から贈られた紅薔薇が、ふっくらとした花輪を揺らしながら咲いています。