構内の桜

東大構内には意外に桜が少ないのです。学生時代、赤門と正門の間に染井吉野が2本、赤門脇に八重桜が2本ありましたが、今は八重桜が1本残っているだけ。しかしその後植えたらしい木が育って来て、殊に工学部の前の並木は見事です。郵便局へ行ったついでに構内へ入ってみました。

正門横の老木と工学部前の並木を観賞してから、安田講堂の裏に移植された枝垂桜が大きくなっているのを見つけ、寄ってみました。本邦初の人工衛星ペンシルロケットがケースに入って芝生に立てられています。レプリカかな、えっ本物?と思いながら、枝垂桜を眺められるベンチに座りました。頭上には新芽の中に花房を垂らした大銀杏。欅の芽吹きが綺麗です。最近の東大構内はあちこちにベンチやテーブルが置いてあって、学生の居場所が提供されているのですが、ベンチは婆さんたちのお喋り、芝生は子供の遊び場に占領されていました。もう卒業式も終わった(国立大学の卒業式は、全国一律3月23日と決まっている)ので、学生らしい若者の姿は稀です。コロナ以前はよく、晴れた日曜日に安田講堂前の大楠の下で新聞を読んだのですが、今日は平日、現役教官に会うと具合がわるい。人目の少ないここで、ヨーグルトを飲み、さっきポストから取ってきた、下関からの手紙と版元からの執筆依頼状の封を切りました。

新聞を読み終えたら、寒い。図書館前へ歩くと、田中後次の噴水が間欠的に水を噴いていました。大勢の人が青いジャンパー姿(青は東大のスクールカラーです)で構内を掃いている。足元を見たら、ヒマラヤ杉の雄花が地面を埋めるほど散っているのでした。学士会館跡に植えられた枝垂桜が、初めて4本揃って花盛りになったのを見ました。