能古島

朝刊に、能古島在住の檀晴子さんのインタビューが出ていました。檀一雄の長男、太郎さんのお嫁さんです。檀一雄が亡父の級友だった話は以前書きました。太郎さんは私と同い年、未だ芸大の学生だった晴子さんと結婚した時、月極でお父さんから貰っていた生活費でいきなり小鳥と鳥籠を買ってしまうという、漫画かフォークソングのような新婚生活でした。晴子さんが檀一雄が編集していた「ポリタイア」という雑誌のデザインをしたり、料理好きだった舅口伝のレシピを出版したりしていたことは知っていました。

生前の檀一雄から、能古島に掘立小屋を建てたから遊びにいらっしゃい、と電話を貰った時、父に行っていいかと訊いたのですが、きっぱり「駄目」と言われました。どうして?と訊くと、ダンのことだから掘立と言っても立っているかどうかあやしい、との返事でした(何か別の心配をしていたのだと思います)。没後、父と一緒に能古島を訪ね、墓碑にお参りしました。その時は普通にお参りしただけだったのですが、妹(私から言えば叔母)と一緒にお参りした時は、跪いたまま20分くらいも起ち上がらず、叔母が顔を覗いたら泣いていたそうです。子供の前では平気な顔をしていましたが、やはり同郷の旧友の墓前で、特別な思いがあったのでしょう。

晴子さんの記事は、能古島で畑仕事をする内に面白くなって、今は熱中しているという話。博多の雑煮用青菜である鰹菜を、刻んでオリーブ油と大蒜で蒸し、パスタに絡める、というレシピを語っていましたが、まさしく檀流クッキングの後継者。太郎さんとは、一度お訪ねします、という約束をしたままになっていましたっけ。