メリー・クリスマス

いつの間にか冬至も過ぎ、気がつけば今夜はクリスマス・イブ。冬至には南瓜に因んだものを何か(パンプキンプリンとか、南瓜サラダとか)食べ、柚子の皮を削って味噌汁の吸い口にする、程度のことは毎年やって来たのですが、コロナのせいで社会的行事から遠ざかり、自分の体力が落ちてきたため家事を省力化するのに併せて、今年は冬至もクリスマスもスルーする所存でした。

白・赤・緑の花を活けて、蝋燭の灯りでチキンソテーと小さなケーキを食べ、クリスマスソングを聴く、くらいが近年の我が家のクリスマスディナーでしたが(若い人の間では、クリパと言うらしい。クリスマスパーティの略語)、今年は何も用意しませんでした。広島から届いた牡蛎のアヒージョに赤ワインの小瓶、宮古島から航空便で来たメロン、それで十分。でもサラダは緑のわさび菜と赤いパプリカに、白いソースをかけました。

子供の頃、父は霞ヶ関から新橋駅に出て、湘南電車で帰ってきましたが、よく駅前の夜店で、何かちょっとした土産を買ってきました。戦後の闇市からようやく復興し始めた時代です。ある年、クリスマス用の色とりどりの豆電球を買ってきたことがありましたが、やがて私も弟も学校が忙しくなって、ずっとしまわれたままになりました。弟の家を片付けた時、それと同じ豆電球が出てきて、はっとしました。

駐留米兵が騒いだ時代、オヤジたちがキャバレーで呑んだくれた時代、家庭でサンタやケーキを演出した時代、カップルが甘い一夜を共に過ごした時代・・・クリスマスイブは戦後日本の変遷を反映してもいました。樅の巨木を伐り倒して、都会の夜の2週間を飾ることへの批判も尤もです。しかし今年のクリスマスのシンボルはやはり、キーウの街に立つツリーでしょう。来年は各国で、それぞれ静かな聖夜を迎えられますように。