ことば・ほとけ・図像の交響

近本謙介編『ことば・ほとけ・図像の交響ー法会・儀礼とアーカイヴ』(勉誠出版)という大きな本が出たので、格闘しました。あとがきから推測すると本書は、ロンドン大学日本宗教研究センターと名古屋大学大学院附属の人類文化遺産テクスト学研究センターのメンバーとによる共同企画「前近代の日本におけるあらたな法会・儀礼学の構築をめざして」(2011/5)なるワークショップに基づく成果を公開するもののようです。

本書は1ことばの響き 2ほとけの響き 3図像の響き 4アーカイヴとの共鳴 という4部構成で、23人の執筆者による論考・資料紹介・コラムを収め、関連する口絵や図版も豊富に載っています。緒言では編者が、各論の要旨と問題意識とを解説しています。論文形式のもの、講演原稿の再録など意図の異なる文章を4部に嵌め込んだのでばらつきがあって、読者にとっては戸惑いもありますが、緒言に言う「領域横断的・複合的な」視野は確保されたと思われます。

自分の関心をよりどころに1ー①阿部泰郎「中世日本におけるほとけとことば」、1ー②猪瀬千尋信貴山と中世聖徳太子伝」、1ー③山野龍太郎「河内源氏の供養と鎌倉幕府の成立」、1ー④三好俊徳「アーカイヴとしての『扶桑略記』」、1ー⑥近本謙介「『維摩経』をめぐる法会・文芸・芸能」、2ー⑤西谷功「北条時頼の臨終儀礼再考」、3ー①泉武夫「古代・中世仏教儀礼における造形の役割」、3ー②黒田彰「新出の列女伝図、列子伝図について」、3ー⑤海野圭介「立川流「阿字観」とその伝本」、4ー①松尾恒一「鎮護国家の仏教と列島の景観」、それに野呂靖さんと山崎淳さんのコラムを読んでみました。門外漢の私には1-②・③・④、2ー⑤、3ー①・②、4ー①などが有益でした。

法会・仏教儀礼研究がもたらすものがようやく見える時期になった、という実感です。