認知症

近所にちょっと年上の夫婦がいて、最近は2人連れで歩くようになりました。道で会うと、以前はにこやかだった奥さんが何故か、子猫を抱えた親猫のような表情になるので不審に思っていたのですが、先日の夕方、戸口で出会い、挨拶したら、ご主人が満面の笑顔でおはようございます、と返し、はっと気がつきました。

銀行で小切手を口座に入れようとしたら、案内係も窓口も、自分の方が勘違いをしているのに私の方を疑ってあれこれ失礼なことを言う。年寄りと見ればみんな認知症だと思っているらしい。キレル老人が多いという話が理解できるようになってきました。

統計では65歳以上の約2割が認知症、などと報じられていますが、あの統計はあてになりません。以前、区の健康調査で、「電話番号は自分で調べてかけるか」にNO(今どき電話番号は機械が覚えている)、「階段の手すりにつかまって歩くか」という質問にYESと答えたら、認知症の疑いありと判定されたからです。官公庁やその外郭団体では業績を誇示するためには数値が高いほどいい、という仕組みになっている。

数年前、認知症サポーターキャラバンというNPOの講習を受け、修了証代わりのオレンジ色のワッパも貰ったのですが、唯一得た新知識は、認知症の人には決して背後から、また突然声をかけてはいけない、彼らにはそれぞれの脈絡があるのだということだけでした。

しかし認知症は気づかない内に始まるかも知れません。エノキさんによると、介護職の知人から、認知症の人の室内はただ散らかっているだけでなく、どこかちぐはぐなところがある(例えば豆腐が箪笥の上に置いてあったり)と教えられたそうです。エノキさんに、私がおかしくなったら言ってね、と頼むと、大丈夫です、理不尽な目に遭っても黙っていらっしゃるようになったら記録をつけ始めます、と請け合われました。