半導体

報道を見ていて、世界経済の鍵はいま半導体にあるらしい、しかも日本はどうやら、半導体弱者になりつつあると理解しました。え、どうして?30年前は、日本の誇る輸出品の1つではなかったか。鳥取暮らしの頃、空港からは1日2便、羽田行きがありましたが、利用者が減って航空便がなくなると半導体の製品輸送に困る、半導体は生ものだから、と聞かされました。工業製品が生ものってどういうこと?と思いましたが、要するに生産する片端から売れていくということなのだろう、人少なな土地でも、工場では最先端の製造が行われているんだなあ、とひそかに誇らしかったものです。

あれこれ読んでみると、1988年には世界で日本の半導体シェアは50%だったが、2019年には10%まで落ち込み、代わって米国やアジア諸国が伸びているらしい。半導体にも普及品と先端品とがあり、今の日本は前者を主に作っており、製造装置や素材など関連分野には強くても、半導体自体ではもはや往年の面影はないようです。

どうしてそうなったかというと、勢いのあった1980年代に日米摩擦が起き、貿易協定を結んだ後、メーカーたちがその枠内で満足して隘路を切り開こうとしなかったからだ、という論があるらしい。国の保護に安住し、メーカー同士が技術開発で協力しようとせず、大きな見通しに基づく転換ができなかった、という分析もあります。

新内閣が誕生する際、頻りに「経済安保」という言葉が出てきました。今や生活必需品も国際的に相互依存するようになっているが、何かの事情で決定的な対立が起こった時のために、代替手段を持っていなければならないようです。近代日本は、貿易摩擦や資源不足に振り回される経験を繰り返してきました。物づくり日本、という私たちの誇りは、過去のものになっていくのでしょうか。