信濃便り・木瓜篇

長野の友人から、垣根に咲いた木瓜の花の写真が送られてきました。

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咲き始めた木瓜の花

【蕾はたくさんついていますが、今のところ開花しているのは数輪です。

和菓子屋には草餅、桜餅、鴬餅が並び、我が家の野沢菜漬はそろそろ漬物容器の底が見えてきました。】

これは淡いぼかし染めのような花です。木瓜は返り咲きも多く、季節を間違えて咲くので「呆け」と呼ぶのだという俗説がありますが、果実の形から、「木の瓜」という意味の名がつけられ、音読み(もっか・ぼっか)が訛って「ぼけ」になったという説の方が正しいようです。花の可憐さに比べて果実は無愛想です。ごろんと大きいので、食べてみたくなりますが、果肉が堅く生食はできません。春の草むらの中に地を這うようにして咲く、濃い朱色の花の種類もあって、草木瓜と呼ばれます。

若い頃、麻原美子さんの軽井沢の別荘に遊びに行き(季節は晩夏だったか、もう記憶が曖昧です)、醤油漬にする大蒜の皮を、2人で一晩中剥き続けたことがありました。庭先に木瓜の実が1個、存在感を主張していて、どうしようかということになり、余っているウィスキーに漬け込んでみました。その後どうなったか、ずっと気になっていたのですが、調べてみると木瓜と花梨は同じ仲間、たった1個だけど果実酒らしきものが出来たはずです。翌朝、食材が何もないと言われ、軒下のラディシュを抜いて根も葉もそのまま刻み、玉蜀黍の実と一緒にマヨネーズで和えたら、美味しいサラダになりました。あのみずみずしさをもう一度実現してみたいのですが、何より、新鮮さが鍵のようです。

木瓜は早くから日本に渡来し、花をデザインした模様はよく使われました。衣服は勿論、和本の表紙にもしばしば見られます。