天狗舞

久しぶりに来客があるので、酒とお茶菓子を買いに行きました。酒屋には八海山も越乃寒梅もありましたが、売れ残っている天狗舞を買いました。話題の人が首相になった時、この酒ははなかなか手に入らなかったのですが、当時住んでいた世田谷の小さな酒屋には置いてあり、店主が、石川県出身だから県人会を通じて配給があるんだ、と得意気に売ってくれましたっけ。あの親父は今どうしているかなと思いながら、4合瓶を提げて帰りました。お茶菓子は、区が作らせた、鴎外の雁を象った練り切り。

客は20年前の教え子です。高校教諭を勤め上げ、来年は定年だという。よもやまの話をしました。コロナ下の高校現場、新カリキュラムへの対応、教員養成の実状、現代の平和教育、昨今の若者気質、電子事情・・・お世辞にもご馳走とは言えませんでしたが、季節の魚と野菜を肴に蕎麦猪口で呑みました。

現場を知らずに降ろされてくる新施策の不足と行き過ぎを、どう埋め合わせていくかに追われている、という話題が幾つも出ました。戦争を実際に体験した世代からはもう遠くなり、間接的だが身近に知っている世代(私の代です)からも離れてしまった現代の10代に、戦争と平和を教えるには何が必要か、という問題は、2人とも考え込んでしまいました。各校へ端末は配られたがZoom用のアプリを入れられないのでオンライン授業ができず、しかし入れた学校もあったらしいのが謎、という話もありました。高校時代に文系・理科系で進路を振り分けることの無意味さについては、意見が一致しました。

久々に呑んだ天狗舞は山吹色で、濃い味がしました。4合瓶はあっという間でしたが、かつては学ランを着て1升瓶を抱いたはずの彼の頬が見る見る赤くなるを見ながら、歳月を痛感した数時間でした。