福岡の従姉から、土用なので鰻を買ったというメールが来たので、東京では国産の鰻は高くて買えない、中国産のレトルトパックは安全性がいまいちだし、と返事したら、年1回の鰻も食べられないなんて、と同情されました。西では鹿児島産の鰻が有名です。

関東では、以前は浜名湖の養殖が有名で、養鰻池の畦には縁取りのように松葉菊が咲き、車窓からは印象的な風景でした。しかし病気が発生したり、輸入物の価格競争に負けたりして、今では池は殆ど潰されたようです。駅弁の御飯に乗っている鰻が次第に小さくなり、まるで郵便切手のようになりました。台湾からは水なしで空輸するので、土用の前には、かさかさ音のする段ボールが航空機の貨物室に積み込まれるそうです。

世田谷に住んでいた頃(18年前)、地元のタクシーに乗って雑談中、多摩川の堤に住み着いたホームレスの話が出ました。何を食べているんだろう、と言ったら、鰻でしょ、との返事。冗談かと思ったのですが、ほんとに天然鰻がいて、運転手はついこないだの日曜日にも獲って捌いて食べた、と言う。彼は生粋の多摩川育ちで、鰻捕りは得意だったらしい。詳しい仕掛けの話もしていました。戦時中(肉魚は入手出来ない時代)、二子玉川なら川魚料理が食べられると言われたものだ、と父が話していたことを思い出しました。

埼玉は江戸時代、武士の蛋白源として田圃で鰻を養殖したのだそうで、大学院時代、突然上級生から浦和まで呼び出され、何ということもなく晩秋の田園を散歩した後、鰻屋で食事をしたことがあります。数人のグループでしたが、たった1度きりのことで、後年、偉くなった彼らの名前をあちこちで見るだけです。

名古屋と関東では、鰻の調理法が違うこともよく知られています。ひつまぶしの茶漬はたしかに美味しいのですが、蒲焼はやっぱり江戸前でなくちゃ。