信濃便り・鯉魚篇

長野の友人から、散歩途中に撮ったという写真が送られてきました。

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信濃路浅春の鯉

【常山邸の脇を流れる川の中を鯉が数匹、悠々と泳いでいました。邸内にある池の鯉は発泡スチロールの屋根の下で冬眠中のようですが、川の鯉は活発でした。

真田邸では観光客が静かに庭を散策していました。たまたま、白サギが一羽、池の周りを歩いているところを目撃しました。常山邸の池の鯉を狙って出勤する、おなじみの白サギではないかと思いましたが、当人に聞くわけにもいかず、真相はわかりません。

昨夜は月を見ながら、去年の今頃はコロナ禍が何たるかわからないまま、入院中だった母との面会禁止の通達に心細い思いをしたことを思い出しました。】

旅先で見た鯉は思い出に残ります。津和野の鯉は有名ですが、大きな橋の上から遙か下の川中で、目ざとく人影を見つけて寄ってくる鯉を見た記憶は、角館だったか岩国だったか・・・鳥取城の濠にも鯉がいて、毎週日曜日の朝、食パンの耳をどっさり持ってきて撒いている女性がいました。話しかけてみたら、喫茶店の主で、サンドイッチの切り落としを振る舞っているのだと言っていました。

ネット上には1尾¥80万もする錦鯉を盗み出して、開いて干してしまった外国の泥棒の話が載っていましたが、長野は食用の鯉でも有名です。佐久の鯉料理がよく知られています。かつて別所温泉に行った帰りに佐久へ寄り、鯉こくを食べてみました。こってりと味噌味で煮込んであって、普段は川魚は嫌いだと言っていた父(玄界灘育ちです)も、厭な顔をしませんでした。硬い骨が恐いので、洗いの方が私は好きです。未だ浅い春を悠然と泳ぐ鯉魚を、そういう眼で見るのは可哀想でしょうね。