蕎麦猪口

今日から、朝のヨーグルトの器が換わりました。濱田友緒展で買った大ぶりの蕎麦猪口です。益子の伝統色と友緒さんのモダンなデザインがほどよくマッチした、掛合赤絵(益子らしい灰白色と黒の地に、柿に近い赤が効いています)。買う時は自分専用の小鉢に使う心算だったのですが、帰り道、永いことヨーグルトの器に使ってきた美濃焼を何日か前に壊したことを思い出しました。起き抜けにまず飲む牛乳のマグカップも、友緒さんの藍鉄塩釉鎬なので、我が家の朝は益子から始まります。

父は、民芸作家は作者名を入れないことが気に入っていました。自宅に床の間飾りなどできなかったせいもありますが、手に乗せて感触や重さを楽しみ、料理を入れて使うのが好きでした。それゆえ我が家では、濱田庄司作の鉢に漬物を盛り、彼のミルクカップでスープを飲みました。ステーキ皿もビールジョッキも、濱田庄司作でした。私が家事をやるようになってからは、気ぜわしくて欠いたり割ったりしそうなので、徐々に食卓の現役からは退きました。

先年、益子参考館へ寄贈した時、使われていた陶器は、死蔵されていた品とは違ってつやがある、と言って頂き、家族を代表して嬉しく思いました。工芸品は使われてなんぼ、と思います。人間国宝が制作した花籠などは、見とれるほどの美しさですが、ついに花を入れることはないんだなあ、とふと可哀想な気になります。

せっかく友緒さんが箱書きもしてくれた蕎麦猪口ですから、大切に使いたいと思っていますが、毎朝のことゆえ、うっかり欠いたりしたらごめんなさい。起き抜けの牛乳と、朝食のヨーグルトは、私のひそかな贅沢です。