「芸能史研究」226号 特集・〈平家語り〉の展開と継承
奥付:2019/7発行(実際は10月4日刊)。問い合わせ先:芸能史研究会
『平家物語』諸本の展開と〈平家語り〉 松尾葦江
中世前期における盲人の芸能 辻浩和
近代の平家語りの享受の場と語りの変化 薦田治子
書評:後藤隆基著『高安月郊研究ー明治期京阪演劇の革新者ー』 寺田詩麻
書評:小林健二著『描かれた能楽ー芸能と絵画が織りなす文化史ー』 藤岡道子
紹介:丸山奈観「近世の権力者の邸宅における催能の場についての考察」・『やそしま』第12号・国立能楽堂開場35周年記念企画展「囃子方と楽器」・例会発表要旨
*2018/06/10のシンポジウム基調講演(松尾葦江)では、『平家物語』の本文流動と語りとに関わる諸問題を展望した。辻浩和氏(中世芸能史)は、〈平家語り〉以前の琵琶法師たちのありよう、社会的地位と芸態とを史料の中に探り、当道座成立前後の変化についてはヒントを示す。鈴木孝庸氏(語り物文芸)は、『看聞日記』に見える〈平家語り〉の演奏、楽器、享受の具体像を描き出そうとした。薦田治子氏(日本音楽)は、近代の〈平家語り〉がどのように変貌してきたかをたどり、芸能は時代とともに変わる宿命を負っていることを見据えている。
シンポジウムの結果、膨張している問題を切り詰め、研究の凹凸をあざやかに彫り出すことができた、と思う。何が判り何が不明か、何を捨て何を掘り起こさなければならないか、今後、〈平家語り〉の研究はここから出発することになろう。(巻頭言より)