抗拒不能

法体系の詳細は、私は知りません。しかし、家庭内犯罪、殊に親の犯罪について、日本の法適用は公正でないのではないか、という気がしてなりません。かつては尊属殺人という言葉があり、子が親を殺した場合は重罪になりました(現在はなくなりました)。ならば子を保護すべき親が、子を責め殺したり、犯したりするのはどうなのでしょう。

野田の虐待殺人の事例はあまりに無残です。親の非道はもとより、何度も、幾つも警戒信号や救急要請が出ていたのに、幼子を地獄へ送り返した大人たち。事態をますます悪くしたのは彼等でもあります。家庭はある意味では密室なので、送り込まれたら、自力で逃げ出せる、もしくは突き壊せる子供はまずいない。

親による性的暴行の場合も同じです。抗拒不能の条件を、家庭内で未成年の女の子に一律に当てはめるのはおかしい。親の犯罪を暴露して一家離散のきっかけを作る覚悟、野宿しても独りで家出する覚悟を彼女たちに持てというのですか?なら、親の方の保護者責任はどうなるのでしょう。裁判官たちの感覚はずれている。

近々刑法の見直しがあるそうで、しっかり議論して貰いたい。家庭内の犯罪、親の犯罪について、行政も司法も弱者に味方しないとなったら、世は闇です。いま身を捨てて運動の先頭に立っている女性、勇気あるとは思いますがあまりに痛々しくて見ていられない。辛すぎます。はやく一般の問題、公の議論として引き取って欲しいと思います。

私たちが女学生の頃、もし暴行されても瀕死まで抵抗していなければ裁判では勝てない、と言われていました。だから夜道は恐怖でした。番長で名を売っていた和田アキ子が、TV番組で「襲われたらどうしますか」という質問に、大真面目で「死ぬまで闘います!」と答えたとき、スタジオに笑いが起こりましたが、私たちは笑えませんでした。