花びら餅

明日の来客のために、扇屋までお茶菓子を買いに行きました。冬は柚子餅が美味しいのですが、正月限定の花びら餅が出ていたので、外国人のお客にお雑煮のことを説明するのにはいいなと思い、両方包んで貰いました。

花びら餅は、甘く煮た細い牛蒡と甘い白味噌餡を、羽二重餅で二つ折りに挟んだものです。餡の色が薄紅色に透けて、桜の花びらのように見えます。我が家の舌には少々甘すぎるのでふだんは買わないのですが、明日の話の種にはちょうどいい。天皇家のお雑煮は、これをお椀に入れてすまし汁を張ったものだと聞いたことがありますが、ほんとうでしょうか。

周知の如くお雑煮は地域によってさまざまで、鳥取在勤時代、お雑煮に餡餅を入れると聞いて仰天、それでお屠蘇を呑むのか、と何度も学生に念を押したのですが、そうです、との答え。正月は帰京したので、とうとう試食する機会がありませんでした。

我が家は父方が博多出身、母方が東京の九段出身(祖先は伊賀上野)だったので、元日のお雑煮は三つ葉と鶏肉と椎茸と焼餅にすまし汁という東京風、2日目は丸餅、大根、人参、里芋等々と鯛の入った博多風、という時期もありました。結局、家族の好みは東京風で一致し、三が日とも鶏と三つ葉になりました。花びら餅のお雑煮も、甘めの味噌味だとすればあり得なくもないとは思いますが、いま一つぴんと来ません。鳥取のお雑煮を食べておけばよかった、と後悔しています。

扇屋は、野上弥生子が毎朝、抹茶とここの和菓子だけを食す習慣だったという老舗です。ついでにくろもじも買って店を出ようとしたら、お年賀の熨斗のかかった大きな丸ぼうろを渡されました。