ナギイカダ

3日は母の命日だったので、駅ビルの花屋で薔薇とガーベラの花束を作って貰いました。定年後に実現したかったささやかな贅沢の1つに、毎週、新鮮な花を買って活けることがあったのですが、実際の年金生活では、経済的にも時間的にもそんな余裕がない。おまけに本郷通りにあった老舗の花屋が代替わりし、どうやら息子夫婦はしぶしぶ家業を継いだらしく、行く度に不愉快な目に遭う。やむなく、あの老舗はなかったものと諦めて、近所の花屋を何軒か回ってみました。

大通りにある花屋は、金持ちの老婦人が道楽にやっていると見え、買った花を高級ブランド店の紙袋に入れてくれるのですが、値が高く、季節の花が少ない。西片町の花屋は去年閉めてしまいました。けっきょく、駅ビルの中にある、夫婦でやっている小さな店で、切り花や苗を買うことが多くなったのです。

主人の方はいつも、売れ残りの花を1,2本おまけにつけてくれます。無愛想な女将の方は、初めはそれが気に入らないらしく、物陰に隠れて私たちの会話を聞いていることもあったので、努めて女将から買うことにしました。すると、葉物を2,3本おまけにつけてくれるようになり、今度もナギイカダを3本、あしらってくれました。

ナギイカダは、熊野のシンボル竹柏の木に似ていて、葉の表裏に花がつく(ように見える)ところからこう呼ばれます。しかし葉と見えるのはじつは茎だそうで、先が尖って痛い。本物の葉は、見かけの葉の根元についている、逆むけの皮に見えるくらいの小さなひらひらです。造化の妙というか、自然物の不思議には驚かされます。

女将の賢さは、長持ちする葉物をおまけにつけることで、何度も花を買い足さなくてはなりません。今日はとりあえず、我が家の日々草を剪って、彩りを補充しました。