レイ&ワ

静かな晩秋の1日です。2日間、警備と報道のヘリコプターがうるさくて、日当たりのいい縁側では読書もできませんでした。TVニュースで視ると、一昨日は6万人、昨日は12万人の人出だったらしい。感激する人々が次々画面に登場しましたが、最も共感したのは、赤坂のビルの窓から車列を見て、「ご立派になられて・・・」と何度も目頭を押さえる老人でした。元宮内庁職員だったそうで、幼時から身の回りのお世話をした、とのこと。これが日本人の平均的感覚でしょうか。歌舞伎役者や神主など世襲の家は今もなお少なくありませんが、まるで自分の子・孫のように、みんなでその成長を見守ってきた対象であることが、まさに「国民統合の象徴」たる所以なのでしょう。

夜間野外コンサートで演奏された曲のタイトルは、レイワ(RayーWa)の掛詞だと友人から教えられました。作曲・指揮は「花は咲く」の作者だそうで、調べてみたら、CMやゲーム曲に実績のある人なのですね。そして作詞者は、いま放映中のNHK土曜ドラマ「少年寅次郎」の脚本家。つくづく時代の推移を実感しました。昭和は遠くなり、もはや郷愁を通り越して注釈の対象です。そして、新しいメディアに乗れる芸術こそが支持される。

沿道に集まった人々の感激は、小旗よりもむしろ、一面に掲げられたスマホや携帯電話に集約されていました。誰もが、「私の撮った」その瞬間を持っていたい。これもまた、時代の大きな変化の現れでしょう。

即位式の日、正殿前の幡が1本、落ちていました。雨天だったのに、即位宣明の直前には、薄日が射してきましたーつい、これを歴史物語や軍記物語だったらどう書いたか、という眼で見ている自分に気づきます。勿論、その時代をどう捉えるか、それに基づいて物語作者たちは意味を付与したわけですが。