写本の事情

昨日に引き続き、終日、写本の様態を細かに観察してはメモを取りました。遠くから聞こえる列車の音、よく手入れされた古い調度品、静かで丁寧な応対・・・わけあって、始めるまでは気の重い調査でしたが、2日間、3人が異なる角度から調査した結果、どうやら独自の問題提起が可能になりそうな見通しが立ちました。書写は、ただ情報を複製するだけではありません。それぞれの書写目的や書写者のレベルが反映され、写本ごとの諸事情が、紙面に刻み込まれています。どこまでそれが読めるか、に集中した2日間でした。

裏付けはこれからだし、調査も全部終わったわけではないのですが、とりあえず進む方向は見えてきて、今後のプロジェクトの日程も相談でき、とにかく現物に向き合えば、何かしら方針が見えるものだ、と痛感しました。

日頃入ったことのない店で、昼食にはキッシュやオリーブのパイでアイスコーヒーを、夜はムール貝やピザで麦酒を、という新体験もしました。大学業務や予備校事情、学会や出版社のあれこれ噂話も出ました。帰宅したら、美しい半月が出ています。郵便受けには再校ゲラ、メールを開ければ添付ファイルで、遅れた原稿が届いていました。出雲の実家へ里帰りしたという友人のメールには、蕎麦の食べ歩きをしたとありました。

冷房に入っていた日は、夜や翌朝がつらい。もう数日は35度らしいのですが、明日から酷暑の東京で、頑張るぞ!