人と書と

田代圭一さんの『人と書と―歴史人の直筆』Ⅱ (新典社)という本が出ました。田代さんは宮内庁書陵部にお勤めで、書誌学に詳しく、ご自分でも書をたしなまれるので、いろいろな形式の、先人の書の写真を贅沢に掲げ、解説をつけて、2冊目として出されたのです。

島谷弘幸さんの序文が、簡にして要を得た紹介文のお手本のようで、まずはそこから読み始めることをお勧めします。あとがきによれば雑誌「書法芸術」の連載をまとめたらしいのですが、コラムに書誌学の知識をわかりやすくまとめて入れたりして、有益で、しかも楽しめる本になっています。書には、人や時代のみならず、目的や内容によって相違があることが一目で分かり、また、いい筆跡は精神的な美味感覚を与えてもくれます。一部、写真が小さすぎたり画面が暗くて文字がよく見えない図版があるのは残念ですが、3冊目を出す時は版元が知恵を出して欲しいと思います。また「本書の構成」の凡例に当たる部分は、箇条書きにした方が読者には便利でしょう。

国語の教員免許を出す大学には必ず書道の先生がいて、私はいつも仲良くして頂きました。自分自身は習字が得意ではないので苦手意識がありますが、本書は少しずつ楽しみながら読んでいきたいと思います。