ニホンザル型とゴリラ型

山極寿一さんのコラム「ヒトが選ぶべきリーダーとは」(朝日新聞朝刊9/12オピニオン欄)を読みました。山極さんはゴリラの生態研究が専門、京大総長や日本学術会議議長なども務めました。霊長類の生態から人類の誕生や人間社会の成り立ちなどを屡々論じます。与党総裁選、野党代表選を前に、群れを成す動物たちがどのような資質によってリーダーとなるか、ブラックユーモアではなく本人は大真面目に説いています。

リーダーの第一条件は目立つこと、群の注目を集め、外敵に向かっては先頭に立って立ち向かう必要があるからです。雌は妊娠・出産があるので、目立つ雄を利用して、自分と子供を守る。雌がリーダーになる象やボノボの社会では、集団の力で暴力的な雄に対抗するし、役に立たない雄のリーダーは団結した雌から追い出されることもあるという。そしてボスとリーダーを区別し、前者はニホンザル社会、後者をゴリラ社会を例に説明します。

ボスは力を誇示して競争相手を屈服させる型。雌は生まれた群を離れず、雄が外からやって来て勝ち抜いてボスになるので、優劣の違いを態度で示し続ける。しかし雌たちが交尾に応じなくなると、群から出て行かざるを得ない。

ゴリラ社会では雌が生まれ育った群を離れて繁殖するので、雄は雌に認められなければ群を作れない。リーダーの条件は雌と子供の安全を守れることなので、常に気配りを欠かさず、仲間同士の仲裁もするし、子供に注意を払い、外敵には身を挺して立ち向かう。その代わり、老いても子供と力を合わせて群を率いていくのだそうです。

最後に山極さんは、人間には言葉を駆使して弱みを強みに変えるという、他の霊長類にない能力がある、例えば軍事力に拠らない国際的発言力、一神教に拠らない多様性への許容力などを挙げ、民意を受け止め己れの資質を明確に示すリーダーを待望すると結びます。