花の名残り

今日あたり、桜前線津軽海峡を渡っているでしょうか。我が家のベランダでは紫蘭や立浪草が咲き始め、石榴の蕾が赫い新芽の間から見えるようになってきました。紫蘭は根茎が伸びるので、鉢の縁に沿って芽を出しますが、我が家の小さい鉢では日に向かって傾きながら葉を広げ、まるで女子フィギュアスケートの選手が、片足を揚げながらリンクを回っていくような姿をしています。狭い天地でごめんね。

川越から送られた撫子を播種した鉢には小さな芽がいろいろ出てきましたが、どれが撫子なのか分かりません。川越に問い合わせたのですが、本家では未だ発芽していないらしい。素馨花が頭が痛くなるほど濃厚な芳香を放つ白い花房を捧げ、窓辺でこの香りに包まれる読書が、1年の中でも特別な楽しみです。しかし今日は南風が強くて、界隈の工事現場から砂埃が舞い込み、窓が開けられません。1階の庭先に植えられた桜の木が大きくなり、散る花びらが風に吹き上げられて、4階の我が家のベランダにも落花の風情。

山形で暮らす従妹の一人娘から、日本酒が1本届きました。山形大学が開発した限定物、今年は自信作ができたとのことなので送ります、という添え書きがありました。近年は大学も起業して資金を稼がねばならない御時世。銘柄は「燦樹」、きらめきと読ませるようです。花見酒だな、とまず仏壇に上げました。長野から貰った蕗の薹が漬けてあったことを思い出しました。胡麻油で素揚げし、甘酢に漬けておいたのです。早速味見ー常温の燦樹は、べたつかず、ほどよい爽やかさ。肴はぴったりでした。だしに甘酢で味をつけた、くらいの薄味がコツ。美しい薄緑も残っています。仏壇に上げておいた盃を冷やしてみたところ、風味はさらに明瞭になりました。

花の名残りを思う酒ー今夜は休肝日の予定でしたが、あえなく挫折。