日本郵便

能登半島地震の被災地でも、郵便の配達が可能になってきて、今年初めての郵便物を受け取った人たちが、ああ日常が戻ってきた、と実感を籠めて呟く姿が報道されました。そう、赤いバイクや自転車が止まって、郵便物を手渡され、何気ない挨拶をしてまた走り去るーそれは、日本の日常生活の原風景とも言える、安心感の源ではないでしょうか。

悪路や悪天候にも拘わらず配達する側の苦労は大変だとは思いますが、どうもその苦労の真価を、いちばん知らないのは当の日本郵便ではないか、と思ってしまうのです(ただの搬送ではない)。文書のやりとりを紙ベースでやらざるを得ない場合の多い私たち(編集者や銀行員も含め)はこのところ、郵便が当てにならないから、とぼやきながら連絡方法を打ち合わせることが多くなりました。実際、週の前半に投函しないと到着は翌週、つまり5日後になる。地方へは月・火曜日に投函しないと駄目、都内でも水曜日の夕方に投函するともう翌週になってしまいます。

急ぐなら速達で、と言いたいのでしょうか。その上郵便料金の大幅値上げが検討され始めているらしい。電子メール時代になっても、葉書で、もしくは封書で申し上げるのが適切である場合、速達ではまずい場合というのはあります。郵便はそういうデリケートな通信手段なのです。電話でも電子メールでもなく、郵便が最適という場合は少なくない。

郵便事業は大幅赤字だというのですが、企業努力をどれだけしているのでしょうか。銀行の支店などは空きスペース活用を工夫している所も多いのに、本局では未だにだだっ広い、作業動線の長い空間のままです。報道によれば、郵便局の数自体を減らさぬことを第一としているそうですが、それならコンビニのように地域のサービス拠点としての役割をも工夫したらどうなのか。自助意識に乏しい民営化とは、何のためだったのか虚しい。