金魚坂

エノキさんから、金魚坂が閉めるんですってね、と教えられました。そう言えば、一時は金魚釣りで賑わっていた(子連れの若いパパたちが多かった)のに、年末からひとけがなくなり、周辺が散らかったりしていたなあ、と思って、見に行きました。狭い小路で金魚の卸売業と喫茶店を経営していて、江戸時代から続く金魚屋として有名です。

私がここへ越してきた時、かつての上級生から、先日、金魚坂は未だやってるんだねえと噂をしたばかり、という葉書を貰って、喫茶店は江戸時代からやっていたわけじゃないことを知りましたが、ある時お客を案内して行ったら、女将から、もともと喫茶店の部分は金魚用の水槽だった、小路の奥なので人目に付かず、お客に来て貰えないので喫茶店を始めた、と聞かされました。正面に中2階みたいな部分があり、使いようによってはごく小さな劇場にもなりそうな構造でした。ピアノが置かれ、道路を見上げる大きな窓があって、中国茶が名物。研究会の後など後輩たちもよく利用したようです。

夕闇が落ち始める頃、小路へ入ってみると、喫茶店には灯りがついているが、水槽には青味泥が溜まっていて、「350年の御愛顧ありがとうございました」という貼り紙が出ている。「金魚生体部門は設備老朽化のため休業しました」「喫茶店は2月12日を以て閉店し、新たな場所での開業を計画しております」という掲示もありました。金魚販売の部署を「生体部門」と言うのか、とちょっと鼻白みましたが、水槽の陰から主らしき人物が出てきたので、どうするのか訊いてみました。金魚の通販は大阪で、喫茶店は移転、ここではもうやらないという。ブログやXで予告しているとのことでしたが、帰宅してアクセスしてみると、閉鎖同然の状態でした。

ゆく者はかくのごときか、昼夜をおかず、と後輩にメールを送りました。