阿波国便り・園瀬川篇

徳島の原水さんから写メールが来ました。愛犬さくらの散歩コースでしょうか。

河川工事後の園瀬川

【あっという間に秋の気配になりました。近くに園瀬川という川が流れているのですが、久しぶりに行って見ると、堤防の左岸がコンクリートになっていました。もとは対岸に見えるより数倍の量の竹林に覆われていました。最近至る所でこうした工事が行われています。県による緊急河川改修工事だそうですが、川底の浚渫をするでもなく、堤防を高くするでもなく、ペタペタコンクリートを張るのに意味があるのでしょうか。】

写真を見比べると、多分砂防工事なのでしょうね。河砂が下流へ流れて洪水被害を大きくするのを予防したかったのでしょうが、確かに風景は異様になりました。コンクリートの孔や中州に生えた草が薄紫色に穂を噴いているのが、秋の徴です。

自然のままの園瀬川岸辺

【40年前にこの地に移り住んだ頃は、クツワムシが賑やかに騒ぎ立て、蛍もおりましたのに、今はすべて消え去り、蚊と蚋がいるだけです(原水民樹)】。

今年は夏の蝉に殆ど出会えませんでした。油蝉もみんみんも、法師蝉も。晩夏に地上に堕ちている亡骸さえ見かけなかったのです。我が家の近辺はどんどん土や草叢が消え、もはや彼らの棲息する余地がなくなったからか、と思っていましたが、杉並区の知人も、秋虫の声が聞こえなくなったとブログに書いていました。一時期、梢で高々と鳴いて、在来種を駆逐していた青松虫さえ鳴かない、とのことです。世田谷に住んでいた頃は秋の午後、他家の垣根で鉦叩きが鳴き、鳥取のアパートでも世田谷のマンションでも、夜は降るような鈴虫の声に包まれて眠りました。1日の労苦がそこで了る、至福の時でした。本郷では何故か鈴虫がいない。露店で買ってきて空地へ放そうか、などと考えているうちに空地が無くなり、沈黙の秋ー不吉な言葉が脳裏を掠めます。