新歌舞伎座

新しくなった歌舞伎座に初めて行きました。大学院時代の友人大島貴子さんが誘ってくれたのです。歌舞伎座に来るのは、何十年ぶり!建物が新しくなってから、気にしてはいたものの、コロナ禍もあってなかなかチャンスがありませんでした。東銀座駅地下1階はそのまま歌舞伎座売店につながっていて、それらしき年代の客がぞろぞろ。地上へ上がってみましたが、歌舞伎座タワーなる建物は大きすぎて見えません。

大島さんは今は愛息と2人暮らし。幕間にいろいろお喋りしました。蔵書整理、墓のこと、目や耳のこと、肉親の遺品片付け、住んでいる街の変化・・・演目は①「双蝶々曲輪日記角力場」、②長唄「菊」、③「水戸黄門讃岐漫遊篇」。1階前列の席だったので、引幕の音がこんなに大きかったっけ、と吃驚しました。もう役者の代がすっかり替わっていて、知らない名も多く、ちょっと寂しい。

①は獅童の濡髪、巳之助が放駒と与五郎の早替わり。あの獅童がなあ、と思いましたが、黒紋付の男はそれだけで様になる。2人とも、この場はあまり観たことがないねえ、と言い合いましたが、上演記録を見ると結構演じられているようです。現代だったらスキャンダルだけど、これが近世、角力という興行芸の一面だったのでしょう。②は雀右衛門を囲む、いかにも元禄と思わせる綺麗な踊り。昔知っていた雀右衛門から何代目かなあ、と歳月を想いました。③は近頃人気の弥十郎のための出し物、と言ってもいい。宮川一郎作、♪人生楽ありゃ苦もあるさ~、という歌が流れてきそうでした。

大島さんと別れて、夜の銀座を数寄屋橋まで歩きました。初めて歌舞伎を観た頃、昭和通りを押し渡る怖い物なしのオバアサンたちを見ながら、私たちもいつかああなるんだよ、と幼なじみと話したことを思い出しながら。彼女は36歳で亡くなりました。