秋を推す

ようやくムスカリの球根を植えました。暑くてそういう気分にならなかったのと、夏の間だけの心算で平鉢に植えておいたヒポエステス(ソバカスソウ)2株の始末に迷っていたからです。春の終わり、球根を掘り上げた後に相応しい苗が見つからず、とりあえず、ピンクと白の斑入りの小さな苗を植えておいたのでした。夏の間にぐんぐん伸び、小萩のような花をつけましたが、新しい葉には斑が入らず、まるで不精者の染髪姿のようで見苦しい。こうなることはうすうす知っていたのですが、近所に花屋がなくなって選択肢が少なくなり、やむを得なかったのです。引き抜くのは可哀想、しかしマダガスカル原産なので冬は室内に入れなければならない、どの鉢に移すか、そんなことに悩んで延び延びになっていました。

今夏、苦しかったのは人間だけではないようです。南米産のランタナが今頃になって発蕾、夏を取り戻そうとするかのような勢いですが、よく見ると、下枝には幾つもの蕾らしき痕跡が黒く焦げています。一方、以前は増えすぎて友人知人に押し売り同然で分けた菊は、葉が銅色になって枯れ、毎朝霧を吹いてやっていますが、果たして咲くかどうか。

元気なのはコリウス。伸びすぎた枝を剪って活けておくと必ず発根するので、どんどん株が増えました。実生で育てた観賞用パプリカにも、まるまると青い実が生っています。最近は蜜蜂が来ないので受精できるかしらと、毎朝、白い小さな花を一々こちょこちょくすぐったりしていたのですが、自家受粉でもOKらしい。

朝晩の空気は涼しくなりましたが、未だ寝茣蓙がしまえず、食器も硝子の器。でも晩酌に磁器の盃を出してみました。しまい込んだ申請書類を探し出し、ベッド脇や食卓の端に積んだ本を入れ替えて、猛暑の3ヶ月間停まっていた時間を、押し動かし始めたところ。