龍門文庫本保元物語

阿部亮太さんの口頭発表「龍門本『保元物語』本文編者の関心」(軍記・語り物研究会第428例会 オンライン)を視聴しました。

会からの通知では事前申し込みは不要だったので、40分ほど前にPCの前に座りましたが、通知には会のHPのURLが書いてありません。グーグルで検索してもヤフーでも出て来ず、日本学術研究支援協会のサイトに掲載された旧URLが出るばかりです。文学通信社が去年ツイートした新URLをクリックして、ようやく入ることができました。しかし発表資料を印刷する暇はなく、共有画面で見ることになりました。参加者は34名でしたから、我が家の端末だけの問題だったのでしょうか。会員外の来聴も可としている以上、公式サイトが素早く検索できるようにしておいて欲しいと思いました。

そういう次第で、発表内容を詳しくメモできなかったのですが、保元物語諸本の中でも取り合わせ本である龍門文庫本を取り上げ、一類本・流布本的な本文と他の諸本や平家物語諸本の本文を採り入れているらしい後半部分(前半部分はほぼ四類本系統)について考察した発表でした。清盛対義朝という構図を浮き彫りにしようとする傾向があり、それは保元の乱が源平抗争の時代の始まりであるという観点に立つものであること、従者の倫理や立場を説く姿勢がつよいこと、西行訪墓説話(白峰)については、源平闘諍録や源平盛衰記との共通点が多いので、読み本系平家物語を参照したらしいと推測しました。

西行訪墓説話は私も大学院時代に考察したことがあり、結論にはほぼ賛成ですが、中世の平家物語、殊に読み本系は、今は喪われた本文がさまざま浮遊していたらしく、現存の一本と直線的な関係を想定すると、全体の見通しを立てる際に困る可能性があります。阿部さんは龍門文庫本の翻刻を計画しているそうで、楽しみに待つことにしましょう。