研究報告会1日目

オンラインによる第3回研究報告会の1日目、研究報告が3本です。

高嶋太郎さんの「<ボルデスホルム祭壇>における宗教と芸術の機能」は、16世紀前半、ドイツのシュレスヴィヒ大聖堂に彫刻家ハンス・ブリュッゲマンが制作したボルデスホルム祭壇について、その美術的完成度と宗教的機能との関係を追究するもの。まず発表資料の画像の美しさに目を奪われました。聖書の名場面を大がかりに造型した祭壇には一般信徒は近づけず、専ら修道士たちが学び、その信仰を高めるためのものだったそうで、ふと弊国における浄土教芸術と対照しました。

安藤香織さんの「近代教育とプロイセン一派ラント法(1794)」は、1794年に施行されたラント法が、19世紀末までドイツ・プロイセンで学校教育の法的基礎として生き続けたのは何故か、国による就学義務決定と地方の教育権限の関連を考察したもの。ドイツでは教会との力関係が大きかったようですが、ちょうど幕末から明治維新以後、軍隊の規律が学校教育の枠組に影響していく日本の場合はどう違うのか、興味を持ちました。

村山木乃実さんの「イスラームのペルシア化が持つ力ー20世紀イラン知識人の宗教事象の記述の修辞性ー」は、20世紀イランの知識人アリー・シャリアーティーが、文学を通してシーア派の改革を広め、イラン社会に大きな影響を与えた過程を追究したもの。当時の人々の反応の方も知りたい気がしました。

ぐずる赤ちゃんを抱き上げたり、背景に沖縄の海が見えたり、指導教官の最終講義や娘のお稽古事の送迎のため途中退出したり、オンラインならではの3時間でした。私は久しぶりに若い方々の真剣な顔を見て元気が出ましたし、キャリア形成の不安や、中国との関係を何とか保っていくための努力についても話が出て、社会の風を感じました。