昨日の午後は、関西軍記物語研究会にリモートで参加しました。来場者数は分かりませんがリモート参加は前半20名弱、後半13名程度で、いつも通りの出足でしょうか。発表は①藪本勝治 さんの「『吾妻鏡』と『平家物語』の関係について」 ②山本洋さんの「戦国軍記研究へのAIの応用—人名抽出アルゴリズムの開発とその評価—」の2本。
①は吾妻鏡と平家物語との関係について、一の谷合戦と以仁王挙兵記事を例に持論を展開、両者は共通の原史料に基づく兄弟関係であるとして、最近の高橋秀樹説に反論するもの。「先行研究」の吟味に多くの時間とレジュメ紙数を費やし、結論は断定には至らない、ということでした。こういう誰もが断定できない問題では、先行研究に(反論であるにせよ)依存するのは空しい。兄弟とか親子とか言う必要は無いので、客観的に想定できる両者の関係とはどういうものかを論じて、それぞれの成立を考えればいいのでは。
この日の圧巻は②でした。まずプレゼン能力が素晴らしい。パワポ画面も話す内容もよく整理されていて、ノイズがないのです。私のようなDXに疎い者にも筋道立って理解でき、今後への展望が自分なりに沸き起こりました。聞き損ねた方はお気の毒です。
膨大な作品が各地に散在し、異本関係が複雑で、本文同定から始まって未解決の問題が山積している後期軍記ですが、人海作戦で基礎作業が続けられてきてすでに60年。近年、崩し字判読アプリや書誌DBが進化普及し、その上、このところの生成系AI登場で、この分野を舞台に新たな試みが始動しています。遅れと数量的膨大さが、今や幸いしたというべきでしょうか。発表を聴いていて、新技術に浮かれているわけではなく、従来の方法を踏まえて新たな方法を設計し、問題点を吟味していることがよく分かりました。尤も、そもそもテキスト作りが大変なんだよなあと密かに思いながらも、昂揚しました。