分散が原則

個人情報保護委員会が動き出せば、安全装置がぎりぎり効くことになるのでしょうか。マイナーカード問題の根底には、仕事のイロハを幾つも取り違えてきたお粗末が重なり、しかも当事者たちにその認識が見られません。国会の委員会中継で他人事のような大臣の背後、デジタル庁の職員でしょうか、へらへら笑いながら私語を交わしている。

素人が見ていても、こんな大事業にこんなことやっちゃいけない、という問題点だらけです。第一に、地方自治体のデジタル能力もシステム水準もまちまちなのに、一気に大量の作業を丸投げしたこと。その上、ポイント制などという餌で釣るような促進の仕方をしたこと。さらに半ば強制的にならざるを得ない医療保険証との合体、運転免許証など、次々に異なる制度との連結(ひもづけというらしい)を打ち出したこと。世帯単位の現行制度と個人単位の新制度のすれ違いを無視していること・・・数え上げればきりがありません。情報転記、殊に文字情報の画面入力は、異なる目による確認(校正)が必須であることも常識でしょう。

個人情報は一旦漏出してしまったら取り戻しようがなく、被害は当人が被ることになるので、一身一代に関わる情報の提供は、当人の選択に留めるべきです。そして重大なことは一つに丸めず、分散しておくのが防護の鉄則で、これはあらゆる危機管理の原則。

履歴書に書ける程度の基礎情報、社会保険関係、納税関係などの塊に分けてデータベースを完成させ、その間の連結は一々の案件ごとに本人が選ぶ。行政の利便=個人の利益とは限りません。そういう客観性を保ったシステムでなければ、今どきの御時世、危なくて乗れませんよ。そもそもどうしてカードレスにしなかったの?掌認証、顔認証などができれば、老人施設も困らなかったでしょうに。