遠来の客

米国の大学で日本語・日本文化を教えているセリンジャーさんが、2週間の予定で来日しました。イタリア文学専門の友人が、日本のダンテ研究を取材しに来日するのに通訳として同行したのだそうで、昨日まで『神曲』の世界を翻案して描く画家を訪問、ドキュメントフィルムを作る手伝いをしていたのだそうです。

40代最後の年だそうで、体格が一回り大きくなった感じがしました。ベルギーで開かれる学会で、能と説話に関する発表を予定しているとのことで、その腹案を聞きました。貴女の言いたいことはこうなの?、そこはよく判らない、といった相槌を打ちながら聴き、そのうちに彼女自身で自分の言おうとしていることを明確化できる、という過程(ゼミでやっていたことです)を、久しぶりに体験しました。

夕方から、英文学専門の多ヶ谷有子さんと落ち合って、本郷通りの呑み屋に入りました。セリンジャーさんはかなり厳格なベジタリアンなのですが、この界隈ではベジタリアン向けのいい店がなかなか見つからない。やむなく日本料理中心の呑み屋を下見しておきました。枝豆、厚揚げ、胡瓜の塩昆布和え、焼茄子、煮大根のフライ、ポテトフライ、野菜サラダ、それに昨日特注しておいた野菜天の盛り合わせ。どうにか一晩のメニューが用意できました。多ヶ谷さんの実家は酒屋なので、日本酒に詳しい。愛知の蔵元の冷酒を味わい、セリンジャーさんは、今日初めて日本酒の美味しさに目覚めた由。子育ての難しさ、そろそろ後生を育てる側に回るようになった、という話もしていました。

本郷3丁目の交差点で別れ、私はコンビニへ寄ってから帰りました。暑い1日でしたが、本郷は夜、若者が湧いて出る街だということを知りました。街角のそこここで、電話したり、友達と何やら相談したり、買い物を提げて下宿へ帰る若者に出遭いました。