米国からの年賀状

 Vyjayanthi Selinger さんから年賀メールが来ました。彼女は印度出身ですが、米国で日本文学を学び、現在はボードウィン大学教授。2児の母でもあります。専門は源平盛衰記(彼女自身が選んだのです。2017年には家族全員で滞日しました)。少し長いのですが、ばりばり活躍しているようなので、本人の許諾を得て一部を転載します。
[謹んで、新年のお慶びを申し上げます。年末は実家に旅行して、子供たちと過ごしました。新年のご挨拶が遅れてしまい、大変失礼いたしました。旧年中は、大変お世話になり、ありがとうございました。
去年を振りかえってみると、いろいろなことが達成できたように思います(子供が大きくなるにつれ、私も研究にどんどん力を入れることができます)。日本にいる間に投稿した「『平家物語』における血の表象」の論文は、やっと2019年に、学会誌 Monumenta Nipponica(Link to article)に載りました。査読が2回もあり、長い道のりでした、そのおかげでいいものになったのではないかと思います。 この論文は評判もよく、昨年中はハーバード大学シカゴ大学で講演の機会をいただきました。
また日本で2017年に書き終えた論文も、2020年の頭に(今週)出ました。『平家物語』を世界文学として考える論文でしたが、これも比較文学の研究者から査読があり、いいものになって出ました( Link to book)。 
世界文学者から刺激をうけ、インドの聖典ラーマーヤナの日本での享受について、日本にいる間に資料を集めました。お話ししたのを覚えていらっしゃいますでしょうか。それを帰国後論文にしてみました。雑誌に投稿して現在査読中です。また長くかかるだろうと思いますが、いろいろ成長できて楽しいです。日本文学を、普段、日本文学に接しない研究者に紹介するが私の目的です。世界文学という分野の欧米中心主義傾向をなんとかしたいのです。
日本で始めたもう一つの研究も実り始めています。おおまかなテーマは「中世文学と中世法思想」ですが、謡曲に集中しております。昨年、学会で2回ほど『牢太鼓』について発表しました。そのうち1回はアジア研究学会で、日本の中世法制史の研究者(神野潔先生)とパネルを組みました。そのおかげで、法と社会史についていろいろなアイディアをいただくことができて、大変有益でした。現在も謡曲について執筆中です。これらの論文はいつ本になるかわかりませんが、コツコツやって行こうと思っています。今年の夏、できれば、資料集めに日本に行きたいと思います。8月のヨーロッパ日本研究学会では、コメンテーターとしてお誘いをいただきました。楽しみにしております。
末筆ながら、昨年と同様に、変わらぬご指導のほど、よろしくお願いいたします。(セリンジャー)]