調酥

伏見の錦織勤さんから、郵便小包を送った、とメールが来ました。早起きして待っていると、箱は軽い。届いた手紙によれば、北大路駅の近くに、主に酒器を作っている、今宵堂という小さな窯元があるので行ってみた、HPに鳥取若桜の酒「弁天娘」が出ていたので以前から注目していた、とのこと。

箱を開けたら、白釉の平盃。釈迦が修行明けにまず食したという乳糜を連想しました。

【土日の午後限定で開ける店ですが、開店時に行ったらもう若い人で一杯で、若者に人気の店なのだと知りました。隙間を縫って、かねて心に決めていた、燗酒を飲むのに具合のよさそうな盃を2つ買ってきました。使ってみると、思った通り、使い勝手のいい盃です。傘寿のお祝いというにはささやかですが、使ってみてください(錦織勤)】。

今宵堂のHPを見たら、なるほど若者向きの、ちょっとデザインを工夫してみた、という酒器や小皿がいろいろ出ていました。晩酌帖という投稿欄があって、酒肴と器、それに季節の風物を撮った1コマ写真が並び、これは楽しいなと思いました。

錦織さんから盃を貰うのはこれで3つ目です。初めて鳥取のお宅で出された盃がよくて、私が離任する時はこれを餞別に下さい、と冗談で言ったら、ほんとに、トラックの出る前に持ってきてくれました。砂色の地に辰砂の紅がぽっと入り、勝手に「落椿」という銘をつけて愛用しています。その後、京土産だと言って藤平寧という人の作を頂き、紫陽花の季節に似合う、いい盃でしたが、銘が「水の盃」とあって、縁起でもないな、としまい込んでいました。お互い、長生きしたから、もう出してもいいか。

錦織さんから貰う盃は持ち具合がちょうどよく、入る酒の量も晩酌にぴったり。つまり使う側から選んだ器です。銘はー「融雪調酥」、若向きには「朝寝の酪」にします。