阿波国便り・三椏篇

徳島の原水さんから写メールが来ました。

三椏(ミツマタ

【当地のソメイヨシノは未だしです。しかし、桜は待っている今の時期が一番良いかもしれません。

むかし、公園で三椏を1枝失敬し、学生に「これは何の木か。形をよく見て」。しばしの凝視の後、学生の1人が「三椏!」「お見事。優をあげる」というような授業をやりました。あの学生達もそろそろ還暦かな(原水民樹)】。

三椏は和紙の原料です。現在の紙幣もこれから作られているそうです。和本を実際に触る授業を受けていても、原料の植物が生えている姿を見て、それと分かる人は少ない。三椏は枝が3つに岐れているのですぐ分かりますが、花や枝でなく葉や茂っている樹形だけを見ても、私は判別できないでしょう。

三椏の花

調べると、三椏と雁皮は沈丁花の仲間なんですね。そう言えば花が似ています。三椏のアイボリー色の清楚な花は、なかなかいい。この時季に似合います。①雁皮と三椏、②楮と梶はそれぞれ和紙の原料ですが、どうも時代によっては混同されているらしく、とりあえずは①と②を区別すればいいのかもしれません。

若い枝の皮を剥ぎ、煮て砕き、とろろあおいなどの粘着材を混ぜて紙に漉くのですが、高校の非常勤講師をしていた頃、先輩の教員たちの親睦旅行に入れて貰って、今庄を訪ねた時のことを思い出します。春休み早々でしたが、今庄は未だ雪の中でした。寒風の吹き通る、開け放した作業場で、絶えず冷たい水を流しながら進められる作業を見ていたら、和紙が貴重品なのも納得できました。大陸から紙が日本に到来したのは意外に遅く、しかし確実な年代は分かっていないようです。