國學院雑誌1390号

伊藤新之輔さんの「卯月八日の花摘みと死者供養」(「國學院雑誌」1390 2月号)という論文を読みました。旧暦4月8日に行われる、民俗学で「卯月八日」と呼ばれる行事について、近世史料をもとに花摘みの意義、竿花の機能、死者供養の場を取り上げて考察したものです。

TVのローカルニュースで、子供たちが4月8日に山で躑躅や藤などの花を集め、花びらを撒きながら村を練り歩く行事を視て、なんて美しい思い出が、この子たちには残ることだろう、と感激したことがありました。釈迦誕生の灌仏会の行事だと思っていたのですが、各地に(近畿と北関東に多い)先祖の霊を迎える行事として伝わってきたと民俗学では考えられているのだそうです(田の神を迎えるとする旧説を伊藤さんは否定)。かつては、盆花は山で採ってくるものでした。民話にもそんな話があり、現在でもそのための草地を維持する地方がある由、4月8日もそうだったとは目から鱗でしたが、では灌仏会との関係はどうなのか、知りたい気がしました。そういう研究もあるのでしょうね。

なおp50、仙果亭嘉栗の狂歌「浮世の人も」の解釈、対になっているのは俗世の人と修行者など聖なる人でしょう。またp51「秘蔵の花の枝をこそ折れ」、付句は前句の謎解きのように詠むので、秘蔵の花を折るとはどういう事情なのかが付句の内容です。

本誌には外国語研究室の教員による座談会「外国語と外国研究」も載っており、新1年生にはお奨め。①母国語と英語以外に、欧州系・アジア系の言語をも知っておく②真剣に外国語の勉強ができるのは大学4年間③語学だけでなくその周辺文化に興味を持って学ぶ④殊に海外に行ったら体験そのものを楽しむ⑤異なる言語で発想し思考することを知るーこれが異なる言語の専門教員たちが異口同音に勧める、今どきの語学履修です。