未解決事件

2日間に亘るNスペで、帝銀事件の関係者たちのドキュメントと再現ドラマを視ました。1日目を見終わって、暫く座を立てませんでした。自分の同時代史を、いかに知らぬままひとは通り過ぎていくことかーその衝撃に打ちのめされたのです。

まず松本清張について、社会派ではあるが粗っぽく書きまくる流行作家、というイメージに囚われていたことを反省しました。若い頃、「点と線」を読み、「砂の器」は映画で観ただけで、あまり熱心な読者ではなかったのです。帝銀事件下山事件に一家言を持っていたことは知っていましたが、広津和郎の方が純粋な気がしていました。

あの当時、帝銀事件下山事件松川事件白鳥事件等々、奇怪な、しかもどぎつい事件が相次ぎ、大きく報道されていたことは今でも覚えていますが、警察がそこまで真相に迫っていたこと、GHQの圧力があったことは今回初めて知りました。石井部隊の忌まわしい戦争犯罪についても、あらましは知っていましたが、戦後、またその後も長く尾を引いていたことは、今回改めて知りました。

そして再び世界がきな臭い対立抗争に向かおうとしている今、戦争というもの、国家権力というものがどんなものか、まざまざと知らされることになりました。改めて思うのは、これだけの記録、映像、音声―談話や証言が保存されていたことの重みです。ここ10数年の政治の周辺には、これだけの記録がちゃんと残っているだろうか。後世の検証に堪えられるまで。

最後に印象に残ったのは何故平沢貞通が狙われたのか(彼の父親は憲兵だったらしいが)、何故彼は自白し、公判まで犯人として演技したのか、という謎。さらに彼の無実のために戦った有志とその家族までも、不幸に巻き込まれたことをウェブで知りました。