連翹

長野の友人から、空家の塀から身を乗り出すように連翹が咲いていました、とメールが来ました。連翹は枝が見えなくなるほど密集して花をつけるので、目立ちます。

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連翹

いかにも漢方薬として中国から渡来した植物らしい名前ですが、子供の頃聴いたラジオドラマに、美少年の遺骸をこの花で埋める悲劇があって、希臘にもあるのかなあとずっと不審に思っていました(ストーリーは全く覚えていないので、何故希臘を連想したのかは不明)。調べてみると、欧州にもあるのですね。さらにこの花は、高村光太郎が愛し、4月2日の彼の命日を連翹忌ということも知りました。花巻に、戦後彼が暮らした家が保存されていて、訪ねたことがあります。縁側のある、つましい家でした。彼の詩には人を励ます力があり、戦時中の戦争協力を恥じて、蟄居したのです。

42年前の春、私は前任校の卒業式に祝電を打ちました。当時、定時制職業高校は定員割れしていて、その年の卒業生は男子1人だけ。せめて賑やかに、という気持ちと最後まで見てやれなくてごめんね、という気持ちでした。電話口で電文の1行目を読み上げた時、局員がエッ、と固まるのが分かりましたが、構わず読み続け、発送しました。

僕の前に道はない

僕の後ろに道は出来る

ご卒業おめでとう。